相続税の支払いに備えるために、手元にある程度の預金がある方は、不動産を活用することで節税する方法があります。ここでは、その仕組みと具体的な節税方法について詳しく説明します。
不動産の評価額が低くなる理由
相続税の計算において、現金や預貯金は額面通りの評価を受けます。しかし、不動産は現金と比べて評価額が低く設定されるため、相続財産としての評価額を下げる効果があります。
土地の評価
土地の評価額は、国土交通省が毎年3月に発表する「公示価格」の80%とされています。これは、実際の市場価格よりも低い評価額です。
家屋の評価
家屋(建物)の評価額は、新築時の価格の50~70%とされています。これも市場価格より低くなり、結果として相続財産の評価額を下げる効果があります。
小規模宅地等の特例
不動産の中でも、特に「小規模宅地等の特例」という制度を活用することで、大幅な評価減が可能です。この特例は以下の3つのタイプに適用されます。
特定居住用宅地
被相続人(亡くなった方)が住んでいた住宅の土地です。例えば、配偶者や同居していた家族が引き継ぐ場合、その土地の評価額が80%減額されます。これは、240㎡までの面積が対象です。
特定業務用宅地
被相続人が事業に使用していた土地が対象です。この場合、事業を引き継ぐ人がその土地を使い続ける場合に、一定の条件のもとで評価額が80%減額されます。こちらも240㎡が限度です。
特定同族会社事業用宅地
被相続人が経営していた同族会社(家族経営の会社)の事業に使われていた土地です。これも事業を引き継ぐ人が条件を満たすと評価額が80%減額されます。
貸付事業用宅地
賃貸用に使用していた土地が対象です。この場合、貸付事業を引き継ぐ人が条件を満たすと評価額が50%減額されます。限度面積は200㎡です。
ローンを活用した節税効果
不動産を購入する際に、銀行などからローンを借り入れると、その借入金は財産の額から差し引かれます。たとえば、1億円の不動産を購入するために、5,000万円のローンを組んだ場合、そのローン残高分だけ、相続財産の評価額が下がります。これにより、相続税の対象となる財産の総額を減らすことができるため、節税効果が得られます。
賃貸不動産としての評価減と収入活用
不動産を賃貸に出すと、評価額をさらに下げることができます。
賃貸不動産の評価減
賃貸物件は自分で使用する不動産よりも評価額が低くなります。これは、収益を生む不動産とされ、将来の収益性を考慮した評価方法が適用されるためです。
家賃収入の活用
賃貸不動産から得られる家賃収入は、そのまま相続税の支払いに充てることができます。つまり、不動産を持つことで得られる収益を、税負担の軽減に役立てることができるのです。
賃貸経営のリスク
ただし、賃貸経営にはいくつかのリスクも伴います。
空室リスク
賃貸物件に借り手がつかない場合、家賃収入が得られず、収益が不安定になることがあります。
修繕・維持費用
不動産の管理には修繕費や維持費がかかります。これらの費用が高額になると、収益を圧迫する可能性があります。
経済的リスク
不動産市場の変動により、物件の価値が下がることがあります。また、賃貸需要が減少するリスクもあります。
まとめ
不動産を利用した相続税対策は、多くのメリットがありますが、リスクも伴います。特に、節税効果を得るためには、法律や税制の細かな条件を理解し、適切に対処することが重要です。事前に専門家のアドバイスを受け、慎重に計画を立てることをお勧めします。