法定後見制度は、判断力が低下した方を保護するための制度です。認知症などにより判断力が低下した場合、まず医師の診察を受けて症状の進行度を確認します。医師の診断書は専門家に相談する際に役立ちます。
法定後見制度の3つのタイプ
法定後見制度には、認知症の進行度に応じて「補助」「保佐」「後見」の3つのタイプがあり、それぞれに対応する後見人の権限が異なります。補助型の利用は、本人が一定の判断能力を持っているため、基本的には本人の意思を尊重しながら補助人がサポートします。
補助型
補助型は、軽度の認知症の方に適用されます。この場合、補助人には家庭裁判所が認めた特定の法律行為に対する同意権のみが付与されます。補助人の権限は次の通りです。
同意権
補助人は特定の重要な行為についてのみ同意権を持ちます。例えば、重要な契約を結ぶ際に補助人の同意が必要です。
代理権の付与なし
補助人は本人に代わって行為をする権限(代理権)を持ちません。ただし、本人が同意した場合や家庭裁判所が特に認めた場合に限り、代理権が付与されることもあります。
保佐型
保佐型は、中等度の認知症の方に適用されます。この場合、保佐人の権限は次の通りです。保佐型では、補助型よりも保佐人の権限が強化されており、本人の判断能力の低下に応じて適切なサポートが提供されます。
同意権
保佐人は、家庭裁判所が指定した法律行為について同意権を持ちます。例えば、高額な買い物や借金をする場合には保佐人の同意が必要です。
代理権の付与
本人が必要だと認めた場合や家庭裁判所が判断した場合に、特定の行為について保佐人に代理権が付与されます。この代理権により、保佐人は本人に代わってその行為を行うことができます。
後見型
後見型は、重度の認知症などで判断能力が著しく低下している方に適用されます。この場合、後見人の権限は次の通りです。後見型は、本人が自らの意思で行動することが困難な場合に、後見人が全面的に支援する体制を整えます。
包括的な代理権
後見人は、本人に代わってほぼすべての法律行為を行うことができます。例えば、不動産の売買、財産の管理、重要な契約の締結などが含まれます。
同意権の省略
後見型の場合、本人の同意は必要ありません。後見人は本人の最善の利益を考慮して行動します。
法定後見制度の利用手続き
法定後見制度を利用するには、家庭裁判所に対して後見人の選任を申し立てる必要があります。手続きの流れは次の通りです。
診断書の準備
認知症の診断を受け、医師から診断書を取得します。
申立書の提出
家庭裁判所に対して申立書を提出します。申立書には、診断書や本人の財産状況などの必要書類を添付します。
審判
家庭裁判所が審判を行い、適切な後見人を選任します。審判では、本人や申立人の意見も考慮されます。
後見人の選任と監督
家庭裁判所が後見人を選任し、後見人の活動を定期的に監督します。後見人は家庭裁判所に対して定期的に報告を行います。
具体的な事例
補助型の事例
Aさん(70歳)は軽度の認知症を患っています。日常生活は自立していますが、高額な買い物をする際に不安があります。家庭裁判所に補助型の申し立てを行い、息子が補助人として選任されました。息子はAさんが高額な買い物をする際に同意を与える役割を担い、Aさんの日常生活をサポートしています。
保佐型の事例
Bさん(75歳)は中等度の認知症で、一部の財産管理に不安があります。家庭裁判所に保佐型の申し立てを行い、弁護士が保佐人として選任されました。保佐人はBさんが不動産を売却する際に同意を与えるとともに、必要な場合には代理権を行使して契約を締結しています。
後見型の事例
Cさん(80歳)は重度の認知症で、財産管理や日常の決定をする能力がありません。家庭裁判所に後見型の申し立てを行い、司法書士が後見人として選任されました。後見人はCさんに代わって全ての法律行為を行い、Cさんの財産を管理し、適切な介護サービスを手配しています。
結論
法定後見制度は、認知症などで判断能力が低下した方を保護し、適切な支援を提供するための制度です。本人の状態に応じて「補助」「保佐」「後見」の3つのタイプから最適なものを選び、家庭裁判所に申し立てを行うことが大切です。この制度を適切に利用することで、本人の生活を安定させ、家族の負担を軽減することができます。