認知症対策を健康なうちに考えるように、自分の死後の事務手続きも事前に準備しておくことが大切です。死後の手続きは多岐にわたり、これを誰が行うのかを明確にしておく必要があります。
まず、病院で発行された死亡診断書をもとに、死亡届を市役所などの行政機関に提出し、火葬許可証を取得する必要があります。この後、葬儀を進めることになりますが、葬儀の詳細についても事前に決めておくことが重要です。宗派や供養するお寺、お墓の場所、葬儀通知を送る相手など、事前に伝えておくべきことは多くあります。また、葬儀の具体的な方法について希望がある場合は、その旨を誰かに頼んでおくことが必要です。
さらに、終末期の医療費の支払いが残っている場合は、病院に対して清算しなければなりません。残された配偶者がいる場合は、遺族年金の手続きを行う必要があります。その他にも、クレジットカードの解約や生命保険金の受け取りなど、死後に行うべき手続きは多岐にわたり、30件以上になることもあります。
これらの手続きは、後見制度の任意契約が本人の死亡とともに終了するため、現在では後見契約に特約を加えるか、別途死後事務委任契約を公正証書で締結しておくことが一般的です。これらの手続きは死後の事務手続きであり、相続財産の手続きとは異なります。遺言に記載する事項とは分けて考えなければなりません。
相続財産に関する手続きについては、預金・貯金・有価証券や土地建物などの不動産が対象となり、相続法に基づき遺言書に記載する必要があります。死後の事務手続きと相続財産の名義変更手続きを分けて準備することが重要です。
認知症になった場合の身上監護や財産の管理、成年後見制度の活用、死後の事務委任契約などは、老い支度を進める上で欠かせない手続きです。しかし、これらの手続きは簡単に他人に依頼できるものではありません。場合によっては、身内であっても躊躇することがあります。
健康がいつまでも続くとは限りませんので、まずは老後の不安と向き合い、自分の遺志を引き継いでくれる家族のためにどのような手続きをしておくべきか、家族や信頼できる人と一緒に事前に法律や福祉の専門家に相談することが大切です。